千葉県の企業向け|節税だけでは守れない時代へ           インフレ時代の税引後利益とETF活用を税理士が解説

成田市・富里市・八街市・印西市・香取市・香取郡などで事業を営む経営者さまにとって、これまで「利益が出たら、まずは節税」はごく自然な経営感覚だったと思います。
もちろん今でも、無駄な税金を払う必要はありません。
ただ、いまは節税だけで会社を守れる時代ではありません。
総務省統計局の2026年2月の全国CPIは、総合で前年同月比1.3%上昇、生鮮食品を除く総合で1.6%上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で2.5%上昇でした。
日本銀行も、消費者物価の前年比上昇率2%を「物価安定の目標」としています。
つまり、今の時代は現金を置いておくだけでは毎年資産が消えていく局面だといえます。

2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)2月分(2026年3月24日公表)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

だからこそ、これからの経営で大切なのは、「いかに税金を減らすか」だけでなく、「税金を払った後にいくら残り、その残った利益をどう守り、どう育てるか」まで設計することです。
ここで間違ってはいけないのは、資産運用は本業の代わりではありません。
物価上昇や原価上昇、本業の利益変動に対する“防波堤”を自社でつくる業務です。


※1 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の銘柄・ETF・投資信託その他金融商品の勧誘、斡旋、売買推奨、投資助言を行うものではありません。
※2 当事務所は、投資顧問業、金融商品仲介業その他の金融商品取引業の登録を行っておりません。実際の投資判断は、資金繰り、財務状況、リスク許容度等を踏まえ、ご自身の責任でご判断ください。
※3 なお、ETFには指数連動型だけでなくアクティブ運用型ETFもありますが、本記事では主としてインデックス連動型ETFを念頭に置いています。

目次

1-1. 節税は必要だが、もはや主役ではない

これまでの中小企業経営では、「できるだけ利益を圧縮し、税負担を軽くする」という発想が強く支持されやすい場面が多くありました。
利益が出れば税金が増える。
だから税金を減らすことが、あたかも経営の成果のように見えやすかったのです。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。
節税は、お金を増やす行為ではありません。
税金を減らすために不要な支出を増やせば、会社に残る現金はむしろ減ります。
本来、経営で見るべきなのは「いくら節税したか」ではなく、税引後にいくら残ったかです。

1-2. インフレ時代は、現金の“見かけの残高”では足りない

物価が上がる局面では、1,000万円の預金残高が翌年も1,000万円であっても、買えるものの量は同じではありません。
直近の全国CPIは前年同月比で上昇しており、日本銀行も2%の物価安定目標を掲げています。
つまり、いまの経営は現金残高そのものだけでなく、現金の実質価値まで見なければならない時代に入っているのです。

この環境で、「税金を減らして、とりあえず現金を置いておく」だけでは、会社のお金は静かに弱っていきます。
節税の発想が不要なのではありません。
節税一辺倒では、インフレ時代に生き残れないということです。

1-3. これからの経営は「節税額」より「税引後利益の運用設計」

税金を払えるということは、本業で利益が出ているということでもあります。
その利益を、節税という名目で消していく発想では、会社はいつまでも内部留保が厚くなりません。

これから重視すべきなのは、
利益を出す → 納税・返済する → 残るキャシュを守る → 余剰資金を育てる
という順番です。

これからは「いかに税金を減らすか」だけでなく、税引後利益の質が問われます。
会社を残すのは、節税テクニックの量ではなく、最終的に会社に残るキャッシュの厚みです。

2-1. 会社を守るのは、節税額ではなく税引後キャッシュ

本業の粗利が落ちたとき、原材料・燃料価格が上がったとき、人件費が増えたとき、会社を支えるのは「去年いくら節税したか」ではありません。
実際に使える現金と、その現金を減らしにくくする仕組みです。

その意味で、利益が出た年ほど、経営者は
「いくら税金が出るのか」
「いくらを本業に残すべきか」
「どこからが余剰資金か」
を明確に切り分ける必要があります。

2-2. 資金管理の基本は、安全性・収益性・流動性のバランス

金融庁は、金融商品を考えるうえで「安全性」「収益性」「流動性」という3つの軸を示し、
3つとも満点の金融商品はないと説明しています。
また、流動性とは「必要になったときにすぐ換金できるかの度合い」です。
これは中小企業の資金管理に、そのまま当てはまる考え方です。

金融庁/資産形成の基本
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/invest/index.html

法人のお金は、すべて同じ性格ではありません。
納税資金、運転資金、借入返済資金、設備更新資金は、
まず安全性と流動性を優先して考えるべきお金です。
一方で、すぐには使わない余剰資金は、はじめて収益性も視野に入れることができます。

つまり、資産運用の前提は「何を買うか」ではなく、
どのお金なら運用に回してよいかを先に整理することです。

2-3. 運用の目的は、本業の代替ではなく本業の補強

経営者の資産運用は、一発逆転を狙うものではありません。
本業が本丸であり、運用はあくまで補助です。

だからこそ、目指すべきは
「大きく勝つこと」ではなく、
「大きく壊さず、長く続けられること」
です。

税引後利益の一部が、数年後の設備更新、景気後退時の資金繰り、採用難への対応などを支える。
つまり、運用は“投機”ではなく、経営の耐久力を高める仕組みとして位置づけやすくなります。

3-1. まず、ETFと投資信託の違いを明確にする

ETFは「上場している投資信託」です。
日本取引所グループ(JPX)は、ETFと通常の投資信託の違いとして、ETFは取引所でリアルタイムの市場価格で売買できること、取引所立会時間中に売買できること、成行・指値で発注できることを示しています。これに対して通常の投資信託は、販売会社を通じて基準価額ベースで購入・換金する仕組みです。

日本取引所グループ/ETFの概要
https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/etf-outline/01.html

つまり、両者はどちらも“ファンド”ですが、性格はかなり違います。
通常の投資信託は、基準価額での購入・換金を前提とした商品。(店舗で買うようなイメージ)
ETFは、上場株式に近い感覚で売買できる投資信託です。(ネットで買うようなイメージ)
どちらが上という話ではありませんが、換金のしやすさや売買の自由度・コスト面を重視する法人資金とは、ETFの方が相性を考えやすい場面があります。

3-2. 個別株ではなく、流動性の高いインデックス連動型ETFを中心に考える

ETFを語るときに大切なのは、ETFそのものが万能なのではなく、そのETFが何に連動し、どれだけ売買しやすいかです。
ETFにはアクティブ運用型もありますが、中小企業の余剰資金運用を一般論として考えるなら、特定企業に賭ける個別株より、市場全体に幅広く分散されたインデックス連動型ETFを中心に考える方が、再現性と管理のしやすさの面で合理的です。

なぜ個別株よりインデックス連動型ETFなのか。
理由はシンプルで、市場平均を継続的に上回ることは、プロでも簡単ではないからです。

S&P Dow Jones IndicesのSPIVA Japan Year-End 2024でも、多くのカテゴリーで過半のアクティブファンドがベンチマークを下回っています。
つまり、世界的な投資ファンドのマネージャーの大半がインデックスファンドに運用成績で負けているという事実です。
投資経験の浅い中小企業の経営者が、本業の合間に個別株を選び続けるより、市場全体を持つ発想の方が、経営との両立を図りやすいのです。

そして、法人がETFを検討するなら、最初に確認すべきは流動性です。
金融庁がいう流動性は「必要になったときにすぐ換金できるかの度合い」です。
法人資金は、個人資金よりも急な現金化需要が起こりやすいため、この点は特に重要です。
JPXはETF市場の流動性向上のためにマーケットメイク制度を導入し、投資家が売買したいタイミングで、より良い価格で売買しやすい環境整備を進めています。
また、銘柄ごとのスプレッドやデプスも日次で公表しています。
したがって、中小企業がETFを検討する場合は、一般論として、流動性の高いETFを選定候補の中心に置くという考え方が妥当です。

3-3. 株式ETFだけではなく、債券ETFも混ぜることが安定運用には重要

安定的な運用を考えるなら、株式ETFだけで組むのは片肺飛行になりやすいです。
金融庁は、1つの資産だけではなく、値動きが異なる複数の資産に分散することで、価格変動をある程度抑え、安定的な運用を目指すことができると説明しています。
例として、国内外、株式、債券、不動産などが挙げられています。

この考え方を法人の余剰資金運用に落とし込むと、株式ETFだけではなく、債券ETFも組み合わせるという発想が自然です。
株式は収益性が期待できる一方、値動きは大きくなりやすい。
債券は株式とは異なる値動きをしやすく、組み合わせることで全体のブレを抑えやすくなります。
金融庁の整理でも、株式と債券は安全性・収益性・流動性の特性が異なります。

また、JPXのETF一覧でも、ETFは日本株・外国株だけでなく、債券バランス型といったカテゴリーが設けられています。
つまり、ETFは「株を買うための道具」ではなく、資産配分そのものを組み立てるための器でもあるのです。

もちろん、債券ETFであっても元本保証ではありません。
金利、信用、為替などの影響は受けます。
それでも、安定性を重視するなら、一般論としては、株式ETFだけに偏らず、債券ETFも混ぜるという視点を外すべきではありません。

今後は節税対策はもう考えなくていいのですか?

いいえ、法人のキャッシュを残すための節税対策であれば、今でも重要です。
ただし、目的は「税金を減らすこと」ではなく、「税引後に会社に残る利益を厚くすること」です。
不要な支出を増やして税金だけ減らしても、会社に残るお金が減れば本末転倒です。

なぜ“納税後利益”で考える必要があるのですか?

納税資金を曖昧にしたまま運用を考えると、あとで資金繰りを崩す危険があるからです。
まず税金を見積もり、納税に必要なお金を確保し、本業資金(返済・投資)を残し、そのうえで余剰資金だけを運用対象として考える。
この順番だからこそ、運用が本業の足を引っ張りにくくなります。

株式ETFだけで十分ではないのですか?

成長性だけを見るなら株式ETFに魅力はありますが、安定性まで考えるなら片寄りやすいです。
金融庁も、株式・債券など値動きの異なる資産に分散することで、価格変動をある程度抑え、安定的な運用を目指せると説明しています。
法人の余剰資金では、一般論として、株式ETFと債券ETFを組み合わせる発想が重要です。

法人でETFを保有する場合、個人と同じ感覚で考えてよいですか?

いいえ。法人では、会計処理や税務処理の確認がより重要です。
JPXも、大口投資家向けの案内で、ETFは組成根拠法の分類により、配当収益や償還・交換の会計上の計上処理が異なる場合があるため、税理士や会計士に確認するよう案内しています。
法人で扱う以上、買う前に、会計・税務の見通しも整理しておくことが大切です。

具体的にどのETFを買えばよいですか?

当事務所では、特定の銘柄・ETF・投資信託その他金融商品の斡旋、営業、売買推奨は行っておりません。
お伝えできるのは、
・「個別株より市場全体に分散されたインデックス連動型ETFを中心に考えること」
・「流動性を重視すること」
・「株式ETFだけでなく債券ETFも混ぜること」
といった一般的な考え方までです。
商品選定が必要な場合は、登録を受けた金融機関・専門家へのご相談をご検討ください。

これからの時代は、節税だけで会社を守る時代ではなく、税引後に残る利益をどう守り、どう育てるかで会社の強さが決まる時代です。
物価が上がる局面では、現金を寝かせるだけでも実質価値は目減りしやすく、日本銀行も2%の物価安定目標を掲げています。
だからこそ、節税の後に残るお金の設計が、これまで以上に重要になります。

そのうえで、余剰資金の運用を考えるなら、個別株を当てにいくよりも、まずはインデックス連動型ETFという器を理解することが出発点です。
ETFと通常の投資信託は仕組みが違い、法人では特に換金のしやすさが重要になります。
また、安定性を重視するなら、株式ETFだけでなく債券ETFも混ぜるという資産配分の考え方が欠かせません。

今回のテーマは、単なる“投資の話”ではありません。
利益の出る会社が、その利益をどう残し、どう守り、どう次につなげるかという、経営設計そのものの話です。

今回の内容は、制度を知るだけでなく、
ご自身の事業や今後の方針を踏まえた
「判断」が求められるテーマです。
ネットの情報だけでは結論が出にくい場合や、
判断の方向性を一度整理しておきたい場合には、
税務顧問としてどのようなサポートが受けられるのかを
確認しておくことも、一つの選択肢になります。

せがわ会計事務所では法人特化型の会計事務所として、
日々の税務判断から将来を見据えたお金の整理まで、
税務顧問サービスを通じて社長に安心できる経営環境を提供しております。
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SEGAWA

最近のご相談で増えているのは、
「何か節税商品はありませんか」というご質問より、
「利益は出ているが、この先の物価上昇が不安」
「税金を払った後のお金を、どこまで本業に残し、どこから余剰資金として考えるべきか分からない」
というご相談です。
私は、これからの中小企業経営に本当に必要なのは、節税のテクニックを増やすことではなく、
お金の色分けを正確にすること
だと考えています。
納税資金は納税資金。
本業を回すお金は本業のお金。
そして、それとは別に、すぐには使わない余剰資金をどう守るか。

この整理ができてはじめて、資産運用は経営の味方になります。
当事務所は、投資顧問業や金融商品仲介業の登録を行っておりません。
そのため、特定のETFや金融商品のご案内、売買の助言はいたしません。
しかし、税理士として、
「いくら税金が出るのか」
「いくらを本業に残すべきか」
「どこからが余剰資金なのか」
を整理し、社長が安心して経営判断できる土台をつくることはできます。
次回は、複利計算の電卓を使いながら、
「毎月いくらを、何年続けると、どのくらい差が出るのか」
という基本的な運用計画の考え方を、経営者向けにわかりやすく整理したいと思います。

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