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売上増なのにお金が残らない?| 簡易課税卒業前に押さえたい「5,500万円の壁」!

売上が伸びてくると、経営者としてはうれしい反面、税金のルールが変わる境目にも近づきます。
その代表例が、消費税の簡易課税制度です。
簡易課税は、計算事務の負担を軽くできるだけでなく、業種によっては納税額そのものを抑えやすい制度です。
ただし使えるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に限られます。
法人なら原則として前々事業年度、個人事業者なら前々年がその判定期間です。
実務では、「税込売上で約5,500万円」が一つの目安として語られます。
これは、売上がすべて10%課税で、税込経理ベースで見た場合に、税抜の課税売上高5,000万円とおおむね対応するためです。
もっとも、軽減税率売上がある場合や、免税事業者だった期間を含む場合などはズレますので、5,500万円は“ざっくり目安”であって絶対線ではない点に注意が必要です。
千葉県・成田市近隣でも、サービス業、不動産業、外注や仕入が比較的少ない事業では、簡易課税のメリットが大きいケースが少なくありません。
だからこそ、「少し超えるだけだから大丈夫だろう」ではなく、“超えた後にいくら残るか”まで先に見ることが重要です。
第1章 簡易課税は「売上5,000万円以下」が条件です
1-1. 簡易課税は、選んでいれば自動で使える制度ではありません
簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮した制度で、売上にかかる消費税額に、業種ごとのみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算します。
ただし、使うためには事前に**「消費税簡易課税制度選択届出書」**を、その課税期間の初日の前日までに提出している必要があります。
みなし仕入率は、国税庁が第1種から第6種まで定めており、今回のテーマに関係が深い主な区分は次のとおりです。
✅ 第3種事業(製造業・建設業など)は70%
✅ 第4種事業(飲食店業など)は60%
✅ 第5種事業(サービス業など)は50%
✅ 第6種事業(不動産業)は40%です。
1-2. 「5,500万円」が目安になる理由
制度上の判定ラインは、あくまで基準期間の課税売上高5,000万円以下です。
ここでいう課税売上高は、消費税等を除いた金額で判定します。
したがって、売上がすべて10%課税で税込表示なら、税込約5,500万円が一つの節目になります。
つまり、税込売上が5,500万円を少し超える程度でも、
税抜では簡易課税の判定ラインを超えている可能性があります。
逆に、軽減税率売上が混じる場合や、基準期間に免税事業者だった期間を含む場合は、単純に5,500万円で判断できません。
“なんとなく5,500万円”ではなく、基準期間の税抜課税売上高で確認するのが正解です。
1-3. 見落としやすい「届出」と「戻るルール」
簡易課税は、一度選択届出書を出したら終わりではありません。
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた課税期間は、その期間について簡易課税が使えません。
ですが、その後の課税期間で再び基準期間の課税売上高が5,000万円以下となれば、
不適用届出書を出していない限り、再び簡易課税が適用されます。
また、簡易課税を使い始めるには課税期間の初日の前日までの届出が必要です。
「売上が超えそうだから、その年の途中で簡易課税に変えよう」は原則できません。
売上が伸びてきた段階で、少なくとも2期先まで見据えたシミュレーションをしておくべき理由はここにあります。
第2章 一般課税になると、どのくらい負担が増える?
2-1. 今回の比較前提
ここでは、影響をわかりやすくするために、次の前提で比較します。
・税込課税売上:5,500万円
・課税仕入:0円
・法人税等は考慮しない
・売上はすべて10%課税
この場合、預かった消費税相当額は約500万円です。
一般課税では、課税仕入にかかった消費税を控除して納税額を計算しますが、
今回は課税仕入0円なので、イメージとしては500万円をそのまま納める形になります。
一方、簡易課税では、この500万円にみなし仕入率を掛けて仕入控除税額を計算するため、
納税額は500万円 ×(1-みなし仕入率)で求められます。
2-2. 業種別にみる納税額の差
この前提で比較すると、主な業種では次のような差になります。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 簡易課税 消費税 | 一般課税 消費税 | 増加する税額 | 最低限必要な追加売上 (税込) |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1種事業 (卸売業) | 90% | 50万円 | 500万円 | 450万円 | 約495万円 |
| 第2種事業 (小売業) | 80% | 100万円 | 500万円 | 400万円 | 約440万円 |
| 第3種事業 (製造業等) | 70% | 150万円 | 500万円 | 350万円 | 約385万円 |
| 第4種事業 (その他) | 60% | 200万円 | 500万円 | 300万円 | 約330万円 |
| 第5種事業 (サービス業等) | 50% | 250万円 | 500万円 | 250万円 | 約275万円 |
| 第6種事業 (不動産業) | 40% | 300万円 | 500万円 | 200万円 | 約220万円 |
第3種はみなし仕入率70%、第4種は60%、第5種は50%、第6種は40%ですから、
この差は制度上自然に出てきます。
とくに第5種・第6種は、みなし仕入率が低いぶん、
「簡易課税のときは助かっていた」ことが数字に表れやすい業種といえます。
なお、第1種(卸売)・第2種(小売)は、制度上のみなし仕入率が高い一方、実際の課税仕入も多いことが多いため、今回の「課税仕入0円」という前提では実務感とズレやすく、参考値としてはやや極端です。
そのため、この記事では特に差が出やすい第3種以降を中心に見ています。
2-3. 「少し売上が増えただけ」で、手残りが減ることもある
ここが一番大事なポイントです。
たとえば第5種事業(サービス業)なら、簡易課税を使える状態から一般課税へ変わることで、今回の前提では約250万円税負担が増える可能性があります。
では、その250万円を売上で取り返そうとすると、課税仕入0円・追加売上がそのまま利益に近いというかなり甘い前提でも、最低限これくらいの追加売上が必要になります。
| 事業区分 | 最低必要な追加売上(税込) |
|---|---|
| 第3種事業 | 約385万円 |
| 第4種事業 | 約330万円 |
| 第5種事業 | 約275万円 |
| 第6種事業 | 約220万円 |
つまり、第5種事業なら、5,500万円を少し超えただけでは、その後の手残りがむしろ減ることがあり得るので、5,775万円以上を超えるとトントン…という事がいえます。
しかも現実には、追加売上に対応する人件費・外注費・販管費も増えることが多いので、実際に必要な売上はこの表より大きくなりやすいはずです。
「売上が増えた=得」ではなく、税負担と資金繰りまで含めて増分利益を見る必要があります。
第3章 5,500万円が見えてきたら、何を判断すべきか
3-1. 特に注意したいのは「仕入が少ない業種」
サービス業や不動産業は、国税庁上の事業区分で第5種(50%)・第6種(40%)に当たります。
この区分自体が、簡易課税の計算上「実際の課税仕入よりも低めに見積もられやすい」場面を生みます。
第6種の不動産業などは、みなし仕入率が40%ですから、預かった消費税の6割が納税ベースになりやすいわけです。
逆に言えば、こうした業種ほど、簡易課税を使えている間は納税額の予測が立てやすく、資金繰りも組みやすい反面、一般課税へ移ったときのインパクトが大きくなりやすいのです。
成田市近隣でも、士業、コンサル、業務委託中心の会社、不動産賃貸・管理などは、この論点を早めに押さえておく価値があります。
3-2. 一般課税の方が有利になるケースもある
ここまで読むと、一般課税はすべて不利に見えるかもしれません。
しかし、そうとは限りません。一般課税は、実際の課税仕入れ等にかかった消費税で控除額を計算する仕組みですから、仕入や外注費が多い会社、設備投資が大きい年は、簡易課税より有利になることがあります。簡易課税はあくまで“みなし”なので、実際の仕入税額が大きい場面では、一般課税の方が合理的です。
ですから、5,500万円が見えてきたときに大切なのは、「超えないようにする」ことだけではありません。
次の2期で、実際の課税仕入や投資計画がどうなるかを見て、簡易課税を維持した方がいいのか、一般課税になっても問題ないのかを事前に判断することです。
3-3. 複数事業がある会社は「区分経理」まで確認したい
実務で意外と差が出るのが、複数事業を営んでいる会社です。
簡易課税では、事業区分ごとにみなし仕入率が違います。
また、課税売上高の75%以上を占める事業がある場合には、
その事業のみなし仕入率を全体に使える特例もあります。
逆に、事業ごとに売上区分をしていないと、
区分していない部分には最も低いみなし仕入率を適用することになります。
つまり、サービス売上と不動産売上が混ざっている、物販と役務提供が混在している、といった会社では、**「そもそも今の区分経理で合っているか」**も見直しポイントです。
単に売上総額だけを見るのではなく、どの売上がどの事業区分に入るのかまで整理しておくと、簡易課税の有利不利判定がかなり精緻になります。
よくある質問
- 税込5,500万円を1円でも超えたら、すぐ一般課税になりますか?
-
いいえ。判定はその年の売上ではなく、基準期間の課税売上高で行います。
法人は原則として前々事業年度、個人事業者は前々年です。
多くのケースでは、影響が出るのは“翌々期以降”です。 - 簡易課税を選んでいたら、ずっと簡易課税ですか?
-
基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は、選択届出書を出していても簡易課税は使えません。
ただし、その後の課税期間で再び基準期間の課税売上高が5,000万円以下となれば、不適用届出書を出していない限り、簡易課税が再度適用されます。 - 仕入や外注費が多い場合でも、簡易課税の方が有利ですか?
-
必ずしもそうではありません。
簡易課税はみなし仕入率で計算するため、実際の課税仕入が大きい年、設備投資が大きい年は、一般課税の方が有利になることがあります。 - サービス業や不動産業で特に注意が必要なのはなぜですか?
-
国税庁の事業区分で、第5種事業は50%、第6種事業は40%のみなし仕入率です。
もともと課税仕入が少ない会社では、一般課税へ移ると納税額が重くなりやすく、
資金繰りに影響しやすいからです。
🔚 まとめ|
簡易課税の判定ラインが近づいてきたら、見るべきなのは「あとどれくらい売上を伸ばせるか」だけではありません。
一般課税になったとき、どれだけ利益と現金が残るかです。
特に、サービス業や不動産業のように、課税仕入や外注費が少ない事業では、
簡易課税を超えたときの負担差が想像以上に大きくなることがあります。
一方で、仕入や設備投資が多い年なら、一般課税が有利になることもあります。
だからこそ、売上が伸びてきた局面では、**「止めるか、伸ばすか」ではなく、「どう着地させるか」**を事前に設計することが大切です。
SEGAWA「売上が増えたのに、なぜかお金が残らない」
その原因の一つが、消費税の課税方式の変化であることは珍しくありません。
特に、簡易課税から一般課税へ切り替わるタイミングは、利益の見え方と実際の資金繰りがズレやすい場面です。
決算書上は黒字でも、消費税の納税資金で一気に手元資金が薄くなることがあります。
売上拡大はもちろん良いことです。
ただ、事業が伸びるときほど、「税金は後から払えばいい」ではなく、先に納税構造を読んでおくことが経営の安定につながります。


