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外国人特定技能生を雇用する前に知っておきたい5つのチェックポイント

深刻な人手不足が続く中、ミャンマーなど東南アジアから特定技能生を受け入れる企業が増えています。
ただし、外国人雇用には日本人採用と異なる法的義務・税務上の判断・監理費の発生など、見落としがちなポイントが多く存在します。
ここでは、採用前に押さえておきたい5つの重要チェックポイントを整理しました。
① 在留資格の確認と適正な職務内容の把握
まず最初に確認すべきは、在留カードに記載された在留資格の種類(特定技能1号・2号)と有効期限です。
この資格が「特定技能」であっても、従事できる業務分野は限定的(例:外食、介護、製造業など)で、契約職務がその範囲に含まれていないと入管法違反となるおそれがあります。
また、雇用契約書や労働条件通知書は日本語と母国語(例:ミャンマー語)併記で作成するのが望ましく、労働時間・休憩・残業・休日・賃金などを本人が理解していることを確認しておくことが重要です。
さらに、外国人を雇用する際には「外国人雇用状況届出書」をハローワークへ提出する義務があります(雇入時・離職時ともに提出が必要)。
② 税務上の取扱いと年末調整の注意点
税務上、特定技能生は日本に居住して生活の本拠があるため、多くの場合は**「居住者」扱いとなります。
したがって、源泉所得税の計算や年末調整も日本人従業員と同様に行います。
ただし、来日間もない場合には「非居住者」扱いとなり、給与の支払い時に20.42%の源泉税率**で課税する必要があります。
在留期間や居住実態を確認し、必要に応じて「居住者・非居住者の判定」を慎重に行いましょう。
また、家族が海外に住んでいる場合でも、送金証明(銀行振込明細など)があれば扶養控除の適用が可能です。
税務署からの照会に備え、証明書類(親族関係書類・送金関係書類など)は英語や現地語のままでも保管し、必要に応じて翻訳を添えることが望ましいです。
③ 社会保険・労働保険の加入は原則義務
特定技能生も、週30時間以上の勤務であれば健康保険・厚生年金の加入義務があります。
「給与を低く設定して社会保険を外す」ことは法令違反となる可能性があるため避けてください。
また、雇用保険は週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば加入対象です。
一方で、短期間(1年未満)の在留資格の場合は、社会保険料の負担が実質的に高くなることもあります。
この場合は、在留期間や契約更新の見込みを踏まえたコスト試算を行い、適正な給与設計を行うことが重要です。
④ 給与設定と「同等以上の報酬」基準
特定技能生の在留資格を更新するためには、**「同等業務の日本人と同等以上の報酬」**であることが求められます。
最低賃金を下回る給与設定や、職務内容と給与のバランスが取れていない場合には、更新が認められないケースもあります。
また、残業代や手当の支給方法にも注意が必要です。
外国人だからといって給与体系を簡略化したり、手当を固定給に含めたりすると、労基法違反となる可能性があります。
給与水準を「社会保険料・税金・監理費を含めた実質コスト」で把握し、トータルの雇用コストを意識して設定しましょう。
⑤ 監理費(支援費)というランニングコスト
特定技能生を受け入れる場合、監理団体(または登録支援機関)への監理費・支援費が毎月発生します。
金額の目安は1人あたり月数万円程度ですが、支援内容(生活サポート・通訳・書類管理など)によって異なります。
この費用は給与とは別に発生するため、実質的には「総人件費の一部」として把握しておく必要があります。
また、ブローカー経由での採用には不当な仲介料が含まれているケースもあるため、
「監理費の内訳」「契約期間」「途中解約の可否」などを必ず書面で確認しておくことが重要です。
まとめ
外国人雇用は、単なる人手確保にとどまらず、在留資格・税務・社会保険・監理費といった複合的な知識が求められます。
特に、給与水準と監理費を含めた「実質的な総コスト」を事前に把握しておくことが、経営上の安定につながります。