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令和8年度税制改正大綱を“税理士が本音で”完全解説

― 年収178万円の壁・資産形成・企業投資はどう変わる? ―
2025年12月、令和8年度(2026年度)税制改正大綱が公表されました。
今回の改正は一言で言えば、
「生活者にはやさしく、稼ぐ力には強く、公平性はより厳しく」
という、これまで以上にメッセージ性の強い内容です。
SNSやニュースでは「年収178万円の壁」ばかりが注目されていますが、
実はそれ以外にも、資産形成・暗号資産・NISA・企業投資・事業承継・住宅取得など、
“知らないと判断を誤る改正”が数多く含まれています。
本記事では、話題性ではなく実務と生活に直結する視点で、
税理士が「ここだけは必ず押さえてほしいポイント」を丁寧に解説します。
第1章|「年収178万円の壁」の正体を正しく理解する
1-1.なぜ178万円なのか?
今回の改正の核となるのが、所得税の控除構造の見直しです。
改正のポイント(所得税)
- 基礎控除
58万円 → 62万円 - 基礎控除の特例加算(低所得者向け)
最大 42万円 - 給与所得控除の最低保障額
65万円 → 69万円
+時限的上乗せ 5万円
これらを合計すると、
178万円程度までは所得税がかからない設計になります。
▶ 重要なのは、
「178万円=非課税」という単純な話ではないという点です。
これはあくまで
✔ 所得税の話
✔ 控除をフルに使えるケース
での“目安ライン”であり、住民税・社会保険は別物です。
1-2.「働き損」は本当に解消される?
一定の緩和効果はあります。
しかし、完全解消とは言えません。
理由は明確で、
- 社会保険の加入基準
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 勤務先の制度
は 税制改正だけでは決まらない からです。
👉 これからは
「何万円まで働けるか」ではなく
「世帯全体でどうなるか」
を見て判断する時代です。
第2章|控除の連動改正が“静かに効いてくる”
今回の改正は、基礎控除だけでは終わりません。
2-1.配偶者・扶養・勤労学生控除も連動
以下の所得要件が引き上げられます(所得税)。
- 配偶者・扶養親族:62万円以下
- ひとり親の子:62万円以下
- 勤労学生控除:89万円以下
- 家内労働者の最低保障額:69万円
▶ これにより、
「少し収入が増えただけで控除が外れる」ケースが減少します。
第3章|資産形成は“国が本気で後押し”する時代へ
3-1. NISAは0歳からスタートできる
つみたて投資枠について、
0歳~17歳の未成年でも口座開設が可能になります。
- 年間投資枠:60万円
- 非課税保有限度額:600万円
▶ 教育資金 × 資産形成
という考え方が、制度として正式に認められた形です。
3-2. 暗号資産は“ギャンブル扱い”から卒業
これまで暗号資産は、
✔ 雑所得
✔ 総合課税
✔ 最大約55%課税
という、極めて不利な扱いでした。
今回の改正では、
**株式等と同様の申告分離課税(20%)**への移行が示されています。
- 損益通算が可能
- 損失の繰越控除が可能
▶ これは「暗号資産を推奨する」制度ではありません。
現実として存在する投資を、税制が追認したと考えるのが妥当です。
3-3. 超富裕層には、より厳しく
公平性の観点から、
極めて高額な金融所得には負担が強化されます。
現在の所得税は累進税率を採用していますが、
株式などの譲渡益は分離課税(一律税率)であるため、
超富裕層になるとかえって税負担率が下がってしまう逆転現象
(いわゆる「1億円の壁」)が課題とされていました。
今回の改正では、こうした超富裕層に追加負担を求める計算式が厳格化されます。
具体的には、追加課税の計算における控除額が3.3億円から1.65億円に半減され、
さらに適用される税率も22.5%から30%へアップします。
- 特別控除額:3.3億円 → 1.65億円
- 税率:22.5% → 30%(2027年分以後)
▶ 「持っている人が得をしすぎない」
という方向性が明確に示されています。
第4章|企業・事業者向け改正は“攻めと選別”
4-1.本気の投資には、本気の優遇
特定生産性向上設備等投資促進税制が新設されます。
選択制:対象となる資産を取得した事業者は、下記を選択適用できます。
- 即時償却
- 税額控除(最大7%)
(建物等は4%)
ただし、
✔ 投資規模
✔ 投資利益率
✔ 事前計画と認定
といった要件は厳しく、
これまで通り、「とりあえず使える制度」ではありません。
4-2.賃上げ促進税制は“ふるい”にかけられる
- 大企業:廃止
- 中堅企業:要件厳格化のうえ継続
- 中小企業:現行制度を基本維持
- 教育訓練費の上乗せ:廃止
▶ 「賃上げ=無条件で優遇」から
実態重視へ舵が切られています。
4-3.中小企業の少額資産は実務改善
- 即時償却対象
30万円未満 → 40万円未満 - 適用期限:3年延長
▶ 地味ですが、現場では非常に使いやすい改正です。
ただし、上限300万円(年間)は変わらないため、要注意です。
第5章|住宅・事業承継も“期限を見誤らない
5-1.住宅ローン控除は5年延長
- 省エネ性能の高い既存住宅(中古)も対象拡大
- 子育て世帯への優遇強化
- 床面積要件の緩和
▶ 「新築一択」の時代は終わりつつあります。
5-2.事業承継税制は“延長されたが油断は禁物”
- 法人版:2027年9月末まで
- 個人版:2028年9月末まで
▶ 延長=余裕、ではありません。
準備を後回しにした人から不利になる制度です。
よくある質問(Q&A)
- 178万円まで本当に税金ゼロ?
-
所得税の話です。住民税・社会保険は別途検討が必要です。
- パートの働き方は楽になりますか?
-
税金面は楽になりますが、社会保険は引き続き別判断です。
- 暗号資産はいつから20%課税?
-
金融商品取引法改正後、施行年の翌年以降が想定されています。
- 子どもNISAは親が自由に使える?
-
名義は子どもです。贈与・管理には注意が必要です。
- 設備投資の税制は中小企業でも使える?
-
可能性はありますが、事前設計が不可欠です。
まずは購入先、ベンダー等に対象となる製品・機械か確認しましょう。
🔚 まとめ|
令和8年度税制改正は、
一見やさしく、実は判断が難しい改正です。
✔ 使えば得
✔ 間違えると損
✔ 何もしないのが一番危険
せがわ会計事務所では、
制度の説明だけでなく、
「あなたの場合どうなるか」まで落とし込みます。
SEGAWA今回のNISAの年齢制限撤廃は、資産形成だけでなく、
相続対策の面でも活用しやすくなった改正だと感じています。
これまでお孫さん名義の預金通帳を作って貯めていたケースでは、相続時に「名義預金」として問題になることもありました。
その代わりに、お孫さん名義のNISA口座へ年間60万円まで贈与する方法を取れば、
お金の持ち主が明確になり、
相続時のトラブルを防ぎやすくなります。
将来の資産形成と相続対策を同時に考えられる点で、
今回の改正は大きな意味があると考えています。


