千葉県内の企業向け|奨学金返還支援制度の税務を税理士が解説    若手採用に効く福利厚生の設計ポイント 

成田市・富里市・八街市・印西市・香取市・香取郡などで若手採用や定着に力を入れる事業者さまにとって、奨学金返還支援制度は注目度の高い福利厚生です。
日本学生支援機構(JASSO)の企業等向け制度では、企業が従業員に代わって、JASSOの第一種・第二種奨学金の返還残額の一部または全額を直接送金できます。
また、地方公共団体の中には、この代理返還を実施する企業等に対して補助制度を設けているところもあります。

企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kigyoshien/index.html?utm_source=chatgpt.com

ただし、税務の観点では「会社が払えば全部非課税」という単純な話ではありません。
税法上は、学資に充てるための費用は一定の要件を満たせば給与として課税しなくてもよいとする一方で、奨学金返済に充てる給付は原則として直ちに非課税の学資金には当たらないと整理しています。
もっとも、一定の事実関係がそろえば、返済支援であっても非課税として扱って差し支えないとする考え方も示しています。
この記事では、この“原則課税・例外非課税”の境界線を、企業実務に落とし込んで整理します。


※ 本記事は、一般的な内容をもとに税務の考え方を解説しています。
実際の税務判断は、事業内容や状況によって結論が変わることがあります。
本記事は情報整理としてご活用いただき、
「自分の場合はどう判断すべきか?」という視点で読み進めてみてください。

目次

1-1. 奨学金返還支援制度(代理返還)とは何か

JASSOの企業等向け奨学金返還支援(代理返還)制度は、企業等が、従業員に代わってJASSOへ直接送金する制度です。
対象は、JASSOの貸与奨学金(第一種・第二種)を受けていた従業員で、企業は払込取扱票または口座振替で送金できます。
口座振替で運用する場合は、企業等情報や支援情報の登録が必要で、支援期間の登録は支援開始年月から1年以内という運用上の制限もあります。

この制度は、単に従業員へ現金を渡すのではなく、
返還先に直接送ることが前提になっている点が重要です。
後で触れるように、税務上も「誰に、どのように、何のために支払うか」が判断の中心になります。
その意味で、JASSOの代理返還は、税務上整理しやすい形に寄せやすい制度設計だといえます。
これは、成田市近隣で若手採用強化を考える企業にとって、福利厚生と税務管理を両立させやすい選択肢といえるでしょう。

1-2. 国税庁が示す原則:学資金は要件を満たせば非課税、ただし無条件ではない

国税庁タックスアンサー No.2588 は、使用人に学資に充てるための費用を支給する場合、一定の要件を満たせば給与として課税しなくてもよいとしています。

No.2588 学資に充てるための費用を支出したとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2588.htm


重要なのは2点で、
第一に通常の給与に加算して支給する費用であること
第二に役員や役員・使用人と特別の関係がある者の学資に充てる費用など、一定の対象外に当たらないことです。
つまり、学資金の非課税は「福利厚生だから当然」ではなく、
給与の付け替えでないことと、対象者設計が適切であることが前提になります。

注意したいのは、「本来支給すべき給与を減額して、その分を学資金名目で支給する」ような設計です。
No.2588 はそのような場合を明確に給与課税としていますので、奨学金返還支援制度を導入する場合は、
既存の給与の一部を置き換えるのではなく、通常の給与とは別建ての支援として設計することが税務上の出発点になります。

1-3. 奨学金返還支援は「原則課税」だが、例外的に非課税になり得る

国税庁の質疑応答事例「奨学金の返済に充てるための給付は『学資に充てるため給付される金品』に該当するか」は、県が財団の奨学金を借りた学生に対し、卒業後に県内企業へ就職して一定期間勤務した場合に、返済支援金を財団へ直接送金する事例を扱っています。

奨学金の返済に充てるための給付は「学資に充てるため給付される金品」に該当するか
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/01/12.htm?utm_source=chatgpt.com


この事例では、返済に充てる給付は原則として“直接学資に充てられる金品”ではないため、直ちに非課税の学資金には当たらないとしつつも、奨学金が授業料・教科書代・通学費用等の修学上必要な費用の範囲内であり、支援金が貸与者に直接送金され、債務残高を超えず、給与課税を潜脱する目的でない場合には、非課税として扱って差し支えないとしています。

ここが、企業の奨学金返還支援制度を考えるうえで最も大切な論点です。
つまり、奨学金返還支援は自動的に非課税になるわけではない一方で、
国税庁は一定の事実関係がそろえば非課税で整理できる余地を認めています。
企業制度にそのまま機械的に当てはまるわけではありませんが、実務上はこの質疑応答事例の判断要素が、制度設計の重要な指針になります。

2-1. もっとも重要なのは「給与の付け替え」にしないこと

税務上、最初に確認すべきなのは、この制度が通常の給与の代替になっていないかです。
この点では、「通常の給与に加算して支給する費用」であることを非課税の要件としており、
本来支給すべき給与を減額して、その分を学資金として支給するものは給与として課税されると明示しています。
たとえば、月給を下げて同額を奨学金返還支援に回す、賞与の一部を奨学金返還枠に振り替える、といった設計は税務上かなり危険です。

つまり、制度を作る際は賃金テーブルとは切り離した福利厚生制度として規程化することが基本です。
「対象者」「上限額」「支援期間」「送金方法」を就業規則や別規程に明記し、
通常給与と混在しないようにすることで、税務調査時にも制度趣旨を説明しやすくなります。
特に成田市近隣の中小企業では、運用の柔軟性を重視して口約束のような形で始めがちですが、
税務上はそれが一番危険です。

2-2. 「直接送金」「債務残高以内」「修学費用由来」が非課税整理の核になる

国税庁の質疑応答事例で非課税とされた理由を整理すると、実務上の重要ポイントは3つあります。

①元の奨学金が授業料・教科書代・通学費用等の修学上必要な費用の範囲内であること


これにより、支援金が他用途へ流用されず、実質的に学資に由来する債務返済にのみ使われることが担保されます。

企業実務に引き直すと、非課税で整理しやすい設計は以下です。
「JASSOの貸与奨学金を対象に」「返済残高を証明書で確認し」「会社からJASSOへ直接送金する」

逆に、従業員へ現金を渡して“自分で返しておいてください”という形は、税務上の説明力が落ちます。
事情によっては他の運用もあり得ますが、少なくとも国税庁の公表事例に最も近いのは直接送金型です。

2-3. 役員・特別関係者・選定基準の設計も外せない

No.2588 では、法人の場合、役員の学資に充てるため支給する費用や、役員・使用人と特別の関係がある者の学資に充てるため支給する費用は、非課税の対象外と整理されています。
また、「特別の関係がある者」には、使用人の親族、事実婚関係者、その直系血族、生計を維持している者など広い範囲が含まれます。

例外的に、その特別関係者自身が使用人であり、かつ、その人だけを対象にした支給でなければ差し支えないという取扱いもありますが、少なくとも制度導入段階では、役員や親族絡みの支援は慎重に切り分けるべきです。

中小企業では、採用した親族や役員候補にも同じ制度を適用したいという相談が少なくありません。
しかし税務上は、「全従業員向け制度」と「特定者向け便宜供与」は見え方がまったく違うため、
対象者の線引きは最初から明確にしておく必要があります。
成田市近隣の同族会社ほど、この論点は見落とされやすいので要注意です。

3-1. 制度導入前に決めるべき5つの項目

制度導入前に最低限決めておきたいのは、
対象者、対象奨学金、支援額、支援期間、送金方法の5つです。

✅ 対象者は、たとえば新卒入社後何年以内か、正社員のみか、有期雇用も含むか。
✅ 対象奨学金は、JASSOの第一種・第二種に限定するのか。
✅ 支援額は月額上限か年額上限か。
✅ 支援期間は3年・5年・返済終了までのどれか。
✅ 送金方法はJASSOへの代理返還に統一するのか。


これらを曖昧にしたまま始めると、後から税務・人事の両面で運用が崩れます。
JASSOの代理返還制度自体も、企業等情報や支援情報の登録を前提としているため、制度設計の曖昧さはそのまま事務負担につながります。

3-2. 証憑管理まで含めて設計する

税務上100点に近い制度にするには、支給の形だけでなく、証憑の残し方まで決めておく必要があります。
たとえば、奨学金の種類が分かる資料、返還残高証明、送金記録、対象者の申請書、就業規則・支援規程、給与台帳との区分が分かる資料などは、後で必ず税務調査で役に立ちます。

国税庁の質疑応答事例が非課税を認めたのも、奨学金の性質、送金先、金額上限が客観的に確認できる事実関係があったからです。

つまり、企業の税務実務では
「ネットでみたから適用した」と話すよりも、**「非課税で整理した理由を説明できること」**が大切です。
税務調査では、制度名や説明資料より、実際の支払いと証憑が重視されます。
成田市近隣の中小企業が制度を導入する場合も、導入初年度から証憑管理を前提にしておくと後で困りません。

3-3. 採用・定着に効く制度だからこそ、税務で崩されないように!

JASSOには、代理返還制度の導入企業等を地域・業種・企業名から検索できるページがあります。
また、地方公共団体が代理返還を実施する企業等に補助制度を設けている場合もあります。

制度を単なる社内福利厚生で終わらせず、採用広報の一部として見せやすい仕組みが整っている点は、若手採用に悩む企業にとって大きな魅力です。

ただし、採用で使いやすい制度ほど、後追いで急いで作ると税務面が甘くなります。
本当に強い制度は、「採用に効く」ことと「税務で崩れない」ことを両立している制度です。

成田市・富里市・八街市などで人材確保に苦戦している事業者さまほど、流行りの福利厚生として飛びつくのではなく、最初から税務設計まで含めて導入することをおすすめします。

会社が従業員本人に現金を渡し、そのお金で返済してもらう形でも非課税になりますか?

国税庁の質疑応答事例で非課税とされたのは、支援金が貸与者に直接送金され、債務残高を超えず、他用途へ流用できない設計です。
本人へ現金交付する形は、その事例より税務上の整理が難しくなります。

既存の給与を少し下げて、その分を奨学金返還支援に回してもよいですか?

No.2588 は、本来支給すべき給与を減額したうえで、それに相当する額を学資金として支給するものは給与として課税されるとしています。したがって、給与の付け替えは避けるべきです。

役員や親族従業員も対象にできますか?

制度上の対象にすること自体は会社の設計次第ですが、税務上の非課税扱いは別問題です。No.2588 では、役員の学資費用や、役員・使用人と特別の関係がある者の学資費用は対象外となるのが原則です。

JASSO以外の奨学金でも同じ考え方でよいですか。

税務上の基本的な考え方は参考になりますが、JASSOの代理返還制度として使えるのはJASSOの第一種・第二種奨学金です。
他の奨学金は契約内容や送金方法が異なるため、同じ前提で一律に判断しない方が安全です。

奨学金返還支援制度は、千葉県・成田市近隣の企業にとって、若手採用と定着の両面で魅力のある福利厚生です。

ただし、税務上のポイントは明確です。
「奨学金返済支援=自動的に非課税」ではありません


通常の給与に加算して支給すること、給与の付け替えにしないこと、修学費用由来の奨学金であること、貸与者へ直接送金すること、債務残高を超えないこと

――こうした事情がそろって、初めて非課税で整理しやすくなります。

制度を入れるなら、福利厚生としての見栄えだけでなく、
税務・人事・運用の3つを同時に設計することが成功のポイントです。

今回の内容は、制度を知るだけでなく、
ご自身の事業や今後の方針を踏まえた
「判断」が求められるテーマです。
ネットの情報だけでは結論が出にくい場合や、
判断の方向性を一度整理しておきたい場合には、
税務顧問としてどのようなサポートが受けられるのかを
確認しておくことも、一つの選択肢になります。

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SEGAWA

奨学金返還支援制度は、若手採用の場面で非常に説明しやすい制度ですが、税務上は“制度名”より“設計中身”が見られます。
特に、給与の付け替えになっていないか、返済先へ直接送金しているか、対象奨学金の性質が確認できるかは、最初から意識しておくべき論点です。
最近は「採用のために急いで導入したい」というご相談も増えていますが、急ぐほど制度が雑になり、後で給与課税リスクが出やすくなります。
導入するなら、若手支援として魅力が伝わることと、税務上きれいに説明できることの両方を満たす設計にしておくことが大切です。
なお、親族のみの同族会社における制度導入はリスクが高いため、お勧めいたしません。

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