役員賞与を経費にするための必須知識!               事前確定届出給与の3つの落とし穴とは?               

目次

会社が役員に支払う賞与(ボーナス)。
従業員と同じように「会社の経費」として計上できると思っていませんか?
実は、税法上、役員賞与は原則として損金(経費)にできません。
適切に処理しないと**「経費にならず税金が増える」**というリスクがあるのです。

この章では、役員賞与に関するよくある誤解を解消し、損金算入が認められるための基本ルールをわかりやすく解説します!

1-1.「役員賞与も給与なんだから経費で落とせる」は本当か?

「従業員のボーナスが経費なら、役員のボーナスも同じでしょ?」
こう思われがちですが、役員と従業員は税務上、全く別の扱いを受けます。

従業員の賞与は、通常の給与と同じく会社の経費(損金)として認められます。
一方で役員は自分で賞与の支給額を決められるため、利益調整による法人利益を圧縮させないように税務上の規制が厳しくなっています。

そのため、役員賞与は法人税法上**「原則として損金不算入」**(経費にならない)とされているのです。

ただし、一定の条件を満たすことで、役員賞与も損金にできる方法があります。
その代表例が**「事前確定届出給与」や「利益連動給与」、「使用人兼務役員の使用人分賞与」**です。
これらの具体的なルールについて、次の項目で解説します!

1-2. 法人税法34条のルールとは?損金になるケース・ならないケース

法人税法第34条では、役員賞与が損金として認められるためのルールが定められています。
ポイントは、**「会社が自由に役員賞与を決めるのはダメ!でも、事前に決めたものならOK」**という考え方です。

具体的には、以下の3つのケースでは損金算入が可能です。

事前に「支給額・支給日」を税務署へ届け出ることで、損金算入が可能。

逆に、これらの条件を満たさない場合、税務調査で**「賞与は損金になりません!」**と否認され、追加の法人税が発生するリスクがあります。

次の項目では、この3つの制度の違いを詳しく解説します!

1-3. 事前確定届出給与・利益連動給与・使用人兼務役員の使用人分賞与の違いを理解しよう

役員賞与を損金算入できる3つの方法の特徴を、以下の表にまとめました。

中小企業では、「事前確定届出給与」を利用するケースが一般的です。
しかし、届出のタイミングを逃したり、支給日を変更すると損金にならないため、慎重な運用が必要です。

また、使用人兼務役員の場合、「使用人分賞与」については損金にできますが、取締役としての職務に対する賞与は対象外です。この点も注意が必要ですね。

役員賞与を適切に損金計上するには、**「事前の計画」と「正しい手続き」**が重要になります。

前章では、役員賞与を損金算入する方法の一つとして「事前確定届出給与」があることを解説しました。
しかし、この制度は非常に厳格で、**ちょっとしたミスで「損金不算入=経費にならない」**という事態に陥ることも…。

「せっかく申請したのに税務調査で否認された!」というトラブルを防ぐために、特に注意すべき3つの落とし穴を解説します。

2-1. 「届出期限」を逃すと損金不算入!申請タイミングの重要性

事前確定届出給与を損金算入するためには、届出期限を守ることが絶対条件です。
では、具体的にいつまでに届出をしなければならないのでしょうか?

答えは、**「会計期間開始日から4か月を経過する日」と「株主総会などで役員報酬を決定してから1ヶ月を経過する日」のいずれか早い日**です(法人税法施行令69条)。
たとえば、決算期が3月の会社が5月25日開催の株主総会で役員報酬を決めた場合、6月25日までには届出を済ませる必要があります。

もしこの期限を1日でも過ぎると、どんなに正しく支給しても**「届出がない=損金不算入」**という厳しい扱いになります。「忙しくてうっかり…」では済まされません。

また、新設法人や役員改選がある場合など、届出期限が異なるケースもあるため、スケジュール管理が重要です。**「賞与を払う前に、まず届出!」**という意識を持ちましょう。

2-2. 「支給額の変更」は原則NG!届出どおりに払わないとダメな理由

事前確定届出給与は、税務署に「支給額」と「支給時期」を事前に届け出たものしか認められません。
では、届出後に支給額を増減させたらどうなるでしょう?

答えは、**「損金不算入(経費にならない)」**です。
たとえ業績が悪化し「減額したい」と思っても、税務上は認められません。
逆に「今年は調子がいいから届出額よりも多く支給しよう!」もNGです。

これは、税務署の立場からいうと「後から自由に変更できるなら、賞与を使って利益を操作できる」と考えるためです。
届出どおりの金額・スケジュールで支払うことが絶対条件となっています。

例外的に変更が認められるケースもありますが、「会社の経営に重大な影響を及ぼすような特別な事情」が必要です。例えば、代表取締役が急逝し、新たな役員体制になった場合などが該当します。
しかし、単なる業績変動では基本的に認められません。

「最初の届出がすべて!」と心得て、慎重に金額と支給日を決めることが重要です。

2-3. 「臨時ボーナスは認められない」!? 役員賞与で絶対にやってはいけないこと

従業員に対しては、業績好調の際に「特別ボーナス」を支給することがありますよね。
しかし、役員賞与においては、事前の届出がない臨時ボーナスは税務上NGとされています。

理由はシンプルで、**「事前に確定していない=利益操作ができる」**と見なされるからです。
役員賞与は原則として損金不算入ですが、「事前確定届出給与」として認められるのはあらかじめ税務署に届出されたものだけ
これに該当しない臨時ボーナスは、どんな理由があっても損金になりません。

例えば、以下のようなケースはすべてアウトです。

  • 業績が良かったので、決算前に特別ボーナスを支給した
  • 急に売上が伸びたので、役員にもインセンティブを払った
  • 役員の努力を評価して、臨時で追加報酬を支給した

どれも経営判断としては正しいかもしれませんが、税務上は認められません。
こうした賞与を支払う場合、法人の経費にはならず、**「法人税が増える+受け取った役員は個人で所得税を負担」**というダブルパンチになってしまいます。

どうしても賞与を支給したい場合は、次年度の株主総会で決議し、「事前確定届出給与」として計画的に実施することが重要です。

役員賞与は、法人税の損金算入だけでなく、社会保険料や年金にも大きな影響を与えるため、適切な設計が重要です。

賞与の支給方法によって社会保険料の負担を最小限にできる!
在職老齢年金の仕組みを理解すれば、年金カットを回避できる!
税務調査で指摘されないために、役員賞与の適正処理を徹底する!

この章では、役員賞与を最適に設計し、無駄な負担を抑える方法を解説します。

3-1. 社会保険料を抑えるには?役員賞与と標準報酬月額の関係を押さえる

「役員賞与を支給したら、会社と役員の社会保険料負担が想定以上に増えた!」

社会保険料は、**「標準報酬月額」と「標準賞与額」**の合計額をもとに計算されます。
この仕組みを理解し、賢く設計することで、会社と役員の負担を抑えることができます。

賞与に対する社会保険料は、**「1回あたりの賞与額が150万円まで」**が標準賞与額の対象となり、それを超えた部分には社会保険料がかかりません(健康保険法第41条)。

つまり、1回の賞与額を150万円超に設定すれば、超過部分については社会保険料が発生しないため、トータルの負担を抑えることができます。

例えば、年300万円の賞与を支給する場合、150万円×2回に分けると、全額に社会保険料がかかります。 しかし、1回300万円で支給すれば、150万円分のみに社会保険料が適用され、残りの150万円は社会保険料の対象外となるのです。

このように、賞与の支給回数や金額を工夫することで、会社・役員ともに社会保険料の負担を最小限にすることができます!

3-2. 在職老齢年金と役員賞与の関係!支給額が減るケースと対策

「年金をもらいながら役員として働いているのに、賞与を受け取ったら年金が減ってしまった!」

これは、「在職老齢年金」の仕組みを理解せずに役員賞与を設計したことが原因です。
在職老齢年金とは、60歳以上の年金受給者が一定額以上の給与や賞与を受け取ると、年金の支給額が減額される制度です。

在職老齢年金の計算では、賞与は**「1年間の賞与額の合計を12で割った額」として計算されます。ただし、計算の上限は「1回150万円まで」**とされており、それを超える部分は無視されます。

つまり、150万円を超えて賞与を支給しても、在職老齢年金の減額対象にはならないのです。

このように、賞与を適切に設計することで、年金の減額を防ぎながら報酬を確保することが可能です。

3-3. 税務調査で狙われるポイントはここ!役員賞与の適正処理チェックリスト

役員賞与は、税務調査で必ずチェックされる項目です。
特に、税務署は「利益調整」や「事前確定届出給与の不適正な運用」を重点的に確認しています。

事前確定届出給与の届出が適正に行われているか?
届出どおりの支給額・支給日になっているか?(変更はNG!)
臨時賞与(特別ボーナス)が支給されていないか?
使用人兼務役員の賞与が、適切に「使用人分」として区分されているか?
会社の利益操作のために、役員賞与が意図的に調整されていないか?

税務調査で否認されると、役員賞与が損金不算入となり、追加の法人税負担が発生してしまいます。
しっかりと準備をして、適正な処理を心がけましょう!

役員賞与は、単に「払えばOK」というものではなく、税務・社会保険・年金のルールをしっかり押さえて計画的に設計することが大切です。
事前確定届出給与の届出期限を守る、支給額や支給日を変更しない、高額賞与を活用して社会保険料や年金負担を最適化するなど、細かいポイントを押さえた運用が求められます。

ただし、役員賞与を使った節税策は、管理や運用がしっかりできる会社でなければリスクが伴います。
安易に「税金を減らしたいから導入しよう」と考えるのではなく、自社の財務状況や今後の経営計画を踏まえた上で、慎重に判断することが重要です。

制度を正しく理解し、適切に活用できれば、役員賞与は会社と役員双方にとって大きなメリットをもたらします。しっかりと準備をして、無理のない範囲で活用していきましょう。

せがわ会計事務所は、千葉県成田市で主に会社設立・法人運営に特化している税理士事務所です。
経験豊富な税理士がパートナーとしてクライアント様をサポートさせていただきますので、
税務や経営に関するお悩みは、お気軽に当事務所までお問い合わせください♪

SEGAWA

最近はyoutubeでも事前確定届出給与をつかった節税策が謳われてますが、もちろん良い面ではなく隠されたデメリットもたくさんあります。(別の機会でブログにします。)

幣事務所では会社設立時から安易な節税策はお勧めせず、税金を払って現金を残す経営を意識していただくようアドバイスします。
一度節税策を味わうと歯止めが利かなくなり、無駄な節税(?)にまで手を出して、経営にも支障がでてしまうものです。

セオリーどおり、事前確定届出給与は65歳以上の社長が在職老齢年金のカット対策のため導入すべきかな、とこれまでの長い実務で痛感してます。

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