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難しい税務処理もスッキリ解決! システム開発費の資産計上・費用処理「3つの鉄則」


第1章:なぜ会社はシステム開発費の税務処理で失敗するのか?
社内システムの開発にかかる税務処理、正しくできていますか?
「とりあえず費用で処理しておけば問題ない」と考えていると、税務調査で指摘を受けることも…。
システム開発費の処理は細かいルールがあり、判断を誤ると税額が大きく変わることもあるのです。
本章では、社内におけるシステム開発の税務処理でありがちな失敗と、税負担を最適化するためのポイントを分かりやすく解説します!
1-1. 「費用で処理したい」は危険?税務調査で指摘される3つの落とし穴
システム開発にかかるコストは、可能なら「すぐに費用で落としてしまいたい」と思うのが本音でしょう。なぜなら、費用として処理すればその分法人税の負担が軽くなり、投資回収期間が短くなるからです。
しかし、すべてのシステム開発費を費用処理できるわけではありません。
ここで間違えると、税務調査で「これは資産計上すべきでしたね」と指摘され、追徴課税を受けることもあります…。
それでは、どんな点に注意すべきでしょうか?
要件定義や設計、プログラムの作成など、新しいシステムを開発する費用は、ソフトウェアの取得価額として資産計上が必要です。
これを誤って費用処理すると、後で修正を求められる可能性があります。
1-2. 資産計上と費用処理で税額がどう変わるのか、具体例で比較!
「資産計上と費用処理で何が違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
簡単に言うと、資産計上すると費用計上できるタイミングが分割されるため、その年の利益が減りにくくなるのです。具体的にシミュレーションしてみましょう。
✅ 100万円をその年に全額経費計上
✅ 利益が100万円減少し、法人税の課税所得も減る
✅ 一時的に税負担が軽くなる
「すぐに経費にしたい!」と思うかもしれませんが、資産計上すべきものを費用処理すると、後で修正申告が必要になり、余計な手間とコストがかかることもあります。
システム開発費の内容・明細金額を確認し、適切な処理をすることが重要です。
1-3. 30万円未満なら即時償却OK?少額減価償却資産の特例を正しく活用しよう
「30万円未満なら資産計上しなくていいんでしょ?」と考えている方、ちょっと待ってください!
実は、すべての30万円未満の支出が即時償却できるわけではありません。
特例の条件を満たしていないと、30万円未満であっても資産計上しなければならない場合もあります。
取得価額が10万円以上のソフトウェアは、資産計上が必要です。
しかし、青色申告をしている法人であれば、一定の条件を満たすことで30万円未満の資産を購入した年度に全額費用処理できます(措法28の2)。
✅取得価額が30万円未満であること(税込経理方式なら消費税を含む金額)
✅青色申告をしている法人であること
✅年間合計300万円までの範囲内であること(超えると資産計上が必要)
✅ 30万円のPCを購入 → OK(全額経費処理可)
❌ 40万円のサーバーを購入 → NG(資産計上が必要)
✅ 25万円のソフトウェアを導入 → OK(全額費用処理可)
❌ 25万円のソフトウェアを合計14台購入 → NG(上限300万円を超える部分は資産)
この特例を正しく活用すれば、資産計上せずに費用処理でき、節税につながる可能性があります。
適用するには条件があるため、事前にしっかり確認しておきましょう!
第2章:間違えないための3つの鉄則|システム開発費の税務処理ルール
前章では、システム開発費を適切に処理しないと税務リスクが発生することを解説しました。
では、実際にどのように判断すればいいのでしょうか?
ここで大切なのが、「開発」「導入」「保守・改修」それぞれの工程で適切な税務処理を行うことです。
国税庁のルールをもとに、税務調査で指摘されないための「3つの鉄則」を分かりやすく解説します!
2-1. 要件定義・設計・開発|「開発費用」を資産計上すべき理由とは?
🚀 鉄則①:「新しいシステム・機能の開発」は資産計上が基本!
システム開発費のうち、「要件定義」「設計」「プログラム作成」の工程は、資産計上が基本です。
理由は、これらの費用が新しい価値を生み出すため、会社の「資産」として扱われるからです。
まったく新しい業務システムをゼロから開発する場合、その費用はソフトウェアの取得価額として資産計上することになります。
この場合、法定耐用年数は5年と決められており、5年間で均等に償却していくことになります。
ただし、「業務の効率化を目的とした既存システムの軽微なカスタマイズ」は費用処理できる場合もあります。
この違いを理解しておかないと、「すぐに経費で落とせると思ったのに資産計上が必要だった…」ということになりかねません。
2-2. ハードウェア・クラウド・ライセンス|どこまで資産計上すべき?
🔧 鉄則②:「導入・インフラ関連費用」はケースごとに処理を分ける!
システムを導入する際、サーバーやPCなどのハードウェア、クラウドサービス、ソフトウェアのライセンスなど、さまざまな費用が発生します。
これらの税務処理は、一律に資産計上するわけではなく、それぞれの性質によって判断する必要があります。
✅ ハードウェア(PC・サーバーなど) → 10万円以上は資産計上が原則(耐用年数4~5年)
✅ クラウドサービス(月額利用料) → 基本的に費用処理(資産ではなくサービス利用料)
✅ ソフトウェアのライセンス(買い切り型) → 10万円以上なら資産計上(耐用年数5年)
✅ パッケージソフトのインストール・設定費用 → 資産計上(ソフトウェアの取得価額の一部)
「Microsoft 365」のようなクラウドサービスの月額利用料は、利用する期間ごとに費用処理できます。
一方で、「買い切り型のソフトウェア」は、その取得費用が10万円以上なら資産計上が必要です。
ハードウェアに関しては、少額減価償却資産の特例で30万円未満なら即時費用処理が可能です。
どの経費が資産計上の対象になるのか、慎重に判断しましょう。
2-3. 修繕費で処理できる?バージョンアップは資産計上の対象?
🔄 鉄則③:「保守・改修費用」は内容を見極めて判断!
システムを運用していると、定期的な保守や改修が必要になります。
このとき、修繕費として費用処理できるのか、それとも資産計上すべきなのかがポイントです。
✅ 単なる不具合修正・メンテナンス → 修繕費(費用処理)
✅ 軽微な機能追加(業務の効率化) → 修繕費(費用処理)
✅ 大幅なバージョンアップ・新機能追加 → 資産計上(耐用年数5年)
たとえば、システムのセキュリティパッチを適用する場合は、現状維持のための修繕費として費用処理が可能です。
しかし、「売上管理機能を新たに追加する」といった改修は、システムの価値を向上させるため、資産計上が必要になります。
また、ハードウェアの入れ替えを伴う場合も要注意です。
たとえば、「老朽化したサーバーの交換」は、資産計上対象となる場合があります。
一方、ハードディスクの交換などの小規模なメンテナンスなら、修繕費として処理できます。
システムのバージョンアップ費用について、「これは資産計上?費用処理?」と迷ったら、「機能の維持」か「新たな価値の追加」かを基準に判断すると良いでしょう。
第3章:税務リスクをゼロにするための実務ポイント
「税務処理、もう完璧!」…と思っていても、税務署のチェックは非常に細かいです。
本章では、税務署がチェックするポイントや、実際に間違えた会社がどうなったのか、さらに判断に迷ったときの相談タイミングについて、分かりやすく解説したいと思います。
3-1. 税務署がチェックするのはココ!適正処理のための3つのコツ
税務署の調査は、「システム開発費を正しく処理しているか?」を細かく確認します。
では、どこがチェックされやすいのでしょうか?
適正な処理をするために、次の3つのポイントを押さえておきましょう!
税務署は、システム開発費の契約書や請求書を確認し、「資産計上すべきものが費用処理されていないか?」をチェックします。
例えば、元帳に「開発費用 500万円」とだけ記載されていると、何の費用なのか分かりませんので、必然的に指摘を受ける可能性が高まり、内容を掘り下げられてしまいます。
対策:👉
**「システム開発(要件定義・設計・プログラム作成)」**など、具体的な内容を帳簿に明記しましょう!
3-2. 税務処理ミスの事例|間違えると会社にどんな影響がある?
システム開発費の税務処理を間違えると、どんなリスクがあるのでしょうか?
実際に起こったケースをもとに、注意点を解説します!
A社は、新しい業務システムを開発した際、500万円の開発費をすべて費用処理しました。
しかし、税務調査で「これはソフトウェアの取得費用なので資産計上が必要」と指摘され、
過去の決算を修正するハメに…!
🔹 影響 → 修正申告により追加の法人税&延滞税等を支払うことに。。。
✅ ミスを防ぐには?
- 契約内容を明確にし、「開発」「改修」「保守」を区別する!
- 30万円未満の特例は適用条件を事前に確認する!
- 「この処理で合ってる?」と思ったら税理士に相談する!
3-3. 「判断が難しい…」そんなときに税理士に相談すべきタイミングとは?
「この費用、資産計上?費用処理?どっちが正しいの?」と迷ったら、税理士に相談するのがベストです!いつ相談すればいいのでしょうか?
システム開発の契約内容によっては、税務処理のルールが変わることがあります。契約を締結する前に相談すれば、「この処理で問題ないか?」を事前にチェックできます!
決算直前に、「この処理で大丈夫?」と焦ることがないように、事前に税理士に確認するのがおすすめです。特に少額減価償却資産の特例を使う場合は、年間の上限額を超えないようにチェックしましょう!
税務署から調査の連絡が来たら、「問題のある処理をしていないか?」を確認することが重要です。税理士と一緒に対応することで、指摘を受けるリスクを最小限にできます!
📌 最終まとめ
- 税務署は契約書・請求書の「内容」を厳しくチェック!
- 過去の処理を間違えると、追加納税や修正申告が発生することも!
- 迷ったら、早めに税理士に相談するのが一番の安全策!
「この処理、大丈夫かな?」と不安に思ったら、まずは税理士に相談しましょう! 正しい税務処理をすることで、会社の税務リスクをゼロにできます!
最後に
システム開発費の税務処理は、「とりあえず費用で処理すればいい」と思っていると後で痛い目にあうこともあります。資産計上と費用処理の違いを理解し、契約内容や支出の性質をしっかり確認することが重要です。
特に、新規開発は資産計上、保守は費用処理といった基本ルールを押さえておけば、税務調査で指摘されるリスクを減らせます。また、少額減価償却資産の特例を上手に活用すれば、税負担を軽くすることも可能です。
とはいえ、実際の処理はケースバイケース。判断に迷うこともあるでしょう。「これって資産?費用?」と悩んだら、自己判断せずに税理士に相談するのがベストです。適切な処理をすることで、無駄な税負担や手間を減らし、会社のリスクを最小限に抑えましょう!
せがわ会計事務所は、千葉県成田市で主に会社設立・法人運営に特化している税理士事務所です。
経験豊富な税理士がパートナーとしてクライアント様をサポートさせていただきますので、
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社内システムの開発がはじまった際には、ベンダーとのキックオフミーティングが始まったタイミングで関係資料を会計事務所へ共有することが重要です。
実務経験上、『よくわからないし調べるの面倒だから…』と、全額を資産計上にしておくといった税務処理も多いのですが、会社経営上は非常に勿体ないです。
開発段階ごとの費用がわかる資料をしっかり共有し、1年でもはやく費用化して投資額を回収することを心がけましょう!