個人名義の車は法人の資産計上NG?                正しい経費処理と最適な選択肢               

目次

「この車、仕事で使ってるんだから会社の資産でしょ?」こう考える方は少なくありません。
特に中小企業や個人事業主の方の中には、業務にも使っている個人の車をそのまま法人資産として計上してしまうケースも見受けられます。
税務のルールは非常に明確で、使用実態だけではなく、“所有権”や“契約名義”が誰にあるかがポイントになります。この章では、個人名義の車を法人資産として扱えない理由を、税理士の視点で丁寧に解説します。

1-1. 「社用で使っている=法人の資産」は大間違い!税務上の基本ルール

どれだけ業務に使用していても、名義が個人であれば、その車は法人の資産として計上できません
税務の基本原則では、「法人が所有し、使用しているもの」が資産計上の対象です。
つまり、名義が法人でない限り、税務上は“他人のもの”を使っている扱いになります。
「使っている=所有している」と捉えるのは、日常感覚では自然ですが、税務では通用しません。
たとえるなら、友人の車を勝手に自分の資産として申告するようなもの。
税務署がそれを見逃すことはまずありません。

1-2. 減価償却できない明確な理由とは?個人資産と法人資産の違い

法人の資産として計上されると、会計上は減価償却を通じて少しずつ費用計上できますが、それが許されるのは法人が所有している資産に限られます。
個人名義のままでは、法人はその車に対して減価償却を行うことができません。
個人所有の車を法人資産として計上し、減価償却を行うと、税務調査で架空経費と見なされる可能性があり、結果として費用が否認されることもあり得ます。
正しい名義であるかどうかは、減価償却の可否に直結しますので、十分注意してください。

1-3. 「知らなかった」では済まされない!誤った資産計上で指摘されるリスク

税務の世界では、「知らなかった」は免罪符にはなりません。
たとえ意図的でなくても、誤った資産計上は「経費の過大計上」とされ、追徴課税や加算税の対象になる可能性があります。特に車のように金額が大きく目立つ資産は、税務調査でも確認されやすい項目です。
名義が個人のまま減価償却をしていた場合、過去数年分の申告の修正(消費税を含む)を求められることもあり、想像以上の負担となる恐れがあります。
リスクを避けるには、制度に即した処理を行うことが不可欠です。

第1章で見たとおり、個人名義の車を法人資産として計上・減価償却をすることはできません
では、まったく法人で経費処理ができないかというと、そうではありません。
業務に使用している実態がある場合、一部の維持費用については法人で処理が可能です。
ただし、処理の仕方を誤れば、税務上の否認リスクにつながります。
この章では、「どこまで法人で負担できるのか」「どう処理すれば安全か」を具体的に見ていきましょう。

2-1. ガソリン代・駐車場代・メンテナンス費…どこまで法人で負担OK?

実はこの議論、税法上明確に規定されているわけではありません。
ただ実務的には、個人名義の車でも、業務で使っている時間や距離に応じて、合理的に按分した範囲内であれば法人利用分は経費処理が可能です。
たとえば、個人名義の車であっても法人の営業用で使用した際に支払ったガソリン代、駐車場代、高速代などは法人で処理することが認められます。
反対に、法人とは関係ない私的利用分を経費にすると、税務調査で否認されるリスクが高まります。
処理にあたっては、走行記録や業務日報など、実態を証明できる資料の保存が重要です。

2-2. 保険の等級がリセットの危険!法人で負担すると起こるデメリット

個人契約の自動車保険を法人が負担することは、見た目には便利ですが、慎重に判断する必要があります。最大の注意点は、名義変更時に保険の等級が引き継げないことです。
個人契約のまま法人が負担し続けたとしても、後に法人名義へ変更した際はこれまで築いた等級がリセットされるケースがほとんどです。
また、税務的にも契約者が個人であるにもかかわらず法人が費用負担することは「不自然な処理」とみなされ、否認対象になりかねません。
具体的には個人が負担すべき経費を法人が負担したものと扱われ、保険料相当額を給与課税&源泉徴収漏れの指摘を受けてしまいます。
保険料の扱いについては、名義・契約形態と支払主体が一致しているかを常に確認し、必要であれば法人契約へ切り替える対応が求められます。

2-3. 「経費で落とせると思っていた」は危険!税務調査で否認されるケース3選

実際の税務調査で否認されやすいのが、「私的要素が強い支出をすべて法人経費として処理していた」ケースです。

個人車両の駐車場代について、全額法人の経費として処理していた。
→ 業務使用時間が一部である場合は、否認されます。

税務上は、支出の目的や実態が重要です。
個人車両を法人で使い続ける場合は、デリケートに経費処理を行う手間が生じてしまいます

ここまでの内容を受けて、「では実際、どう対応すればいいのか?」と疑問を持たれる方も多いでしょう。結論から言えば、名義と実態を一致させることが、最も確実かつ安全な方法です。
この章では、税務リスクを最小限に抑えるための3つの実務的な選択肢をご紹介します。

3-1. もっとも安全なのは法人へ売却!売却時の手続きと注意点

最も理想的な対応は、個人名義の車を法人に売却し、名義変更を行うことです。
これにより、法人の資産として正式に扱うことができ、減価償却や保険契約も法人名義で行えます。
注意点として、保険等級が下がること、そして売却価格を適正な時価で設定する必要があります。
国税庁では、中古車査定などの客観的な価格に基づくことを求めており、不当に安く・高くすることは給与課税や受贈益課税の指摘を受けてしまいます。。
また、売買契約書の作成や代金の支払い記録を残すこと、個人の譲渡所得の申告も必須です。
これらの手続きを適切に行うことで、税務上も安心して資産として扱えるようになります。

3-2. どうしても個人名義のまま使いたい場合は?賃貸処理(リース契約)のすすめ

名義変更が難しい場合の代替策として、法人が個人から車両を借りる「賃貸処理」という方法があります。法人は賃借料を経費として処理でき、個人は賃料収入(=雑所得)を得る形になります。
ただし、賃料は市場相場に基づいた金額
である必要があり、あまりに高額・低額だと税務署に不自然と判断される可能性があります。さらに、契約書を作成し、期間・金額・支払方法を明記することが重要です。
この方法は、名義変更せずに経費処理を行える「実務的な選択肢」ではありますが、設計を誤るとリスクもありますので、専門家への相談が推奨されます。

3-3. 法人名義に変更できない場合に気をつけるべき3つのポイント

名義変更も賃貸処理も難しい場合は、以下の3点に注意して運用することが求められます。

注意
経費処理の合理性

使用割合に基づき、ガソリン代や整備費用などは按分して処理する。

注意
保険の整合性

法人が費用を負担する場合は、可能であれば法人契約へ切り替える。

注意
利用実績の記録

業務での使用実態(走行距離・訪問先など)を記録しておき、税務調査時に説明できる状態にしておく。


完全な名義変更ができない場合でも上記を意識していただき、税務リスクを抑えた運用をしましょう。

ここまでご覧いただき、本当にありがとうございました。
「個人名義の車を法人で使っているけれど、これってどう処理すればいいの?」という疑問に対し、少しでもお役に立てたなら幸いです。税務は複雑に見えて、正しいルールを理解すれば十分に対応可能です。
大切なのは、「何となく」で判断せず、名義・実態・契約の整合性を意識すること。
そして、迷ったら早めに専門家に相談することです。
正しい処理が、あなたの事業を健全に守る土台になります。

せがわ会計事務所は、千葉県成田市で主に会社設立・法人運営に特化している税理士事務所です。
経験豊富な税理士がパートナーとしてクライアント様をサポートさせていただきますので、
税務や経営に関するお悩みは、お気軽に当事務所までお問い合わせください♪

SEGAWA

法人成りによる車問題は当事務所もよく扱うケースです。
保険の等級などを気にされて賃貸処理を希望される方もいらっしゃいますが、当事務所としては個人名義の車両は『法人へ売却』を進めてます。
賃貸処理はその後の経理処理、維持管理、個人の確定申告が煩雑になりますので、当方としてはあまりお勧めしておりません。
保険等級が下がったとしても、キレイさっぱり法人名義へ移されたほうが、時間と手間を考えると費用対効果は高いのではないでしょうか?

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